指5本、それぞれ動く筋電義手 握る、つまむ…細かな作業も可能に

岩堀滋
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 【神奈川】前腕が欠損した人の、腕の筋肉を動かす際に生じる微弱な電気(筋電)を読み取り、指を動かす電動義手がある。このうち5本指がそれぞれ動くタイプが開発された。プロジェクトチームは4年前に人さし指と親指のみが動く義手を開発しており、この技術を応用。利用者が自治体の公費負担で入手できる厚生労働省の基準もクリアした。

 電気通信大(東京都調布市)の山野井佑介・特任助教(30)らのグループが手がけた。山野井氏は、筋電義手の開発に20年以上前から取り組む横井浩史教授の研究室に所属。前腕欠損の障害がある被験者のデータ分析は横浜国立大の加藤龍准教授の研究室も協力した。

 日常生活動作の約85%がカバー出来る「握る」「つまむ」「かぎ型握り」の3種類の動作が可能なほか、機能上は計8種類の動作が可能。前腕欠損の腕にかぶせるソケットという外殻の先端に、電動義手(ハンド)を取り付けて使う。つかめる物の重さは最大約5キロ。ソケットに取り付けた充電池が電源になる。1回の充電で4~5時間程度の日常動作で使える。

 筋電はソケット内部に取り付けたセンサーで検知し、ハンド内の電子回路に送られる。利用者に最適な筋電量と動作パターンをいったん回路に認識させれば、ソケットを腕にかぶせて筋肉を動かすことで指が動く仕組みだ。「個性適応学習機能」と呼び、一定期間、医療機関へ入院して訓練が必要な外国製筋電義手との大きな違いでもある。

 横井教授の研究室グループが開発した筋電義手が2018年、国産筋電義手として初めて厚労省基準をクリア。自治体の公費負担対象になり、この時も同じ学習機能を持たせていた。

 当時の筋電義手は基本的に人さし指と親指のみが動くもので、細かい手作業などは不向きだった。今回の5本指型はそれが可能になり、電源オフ時に設定が保存され、電源オン時にすぐ使える機能を追加した。

 モーター搭載数が増えたため、ハンドは18年の筋電義手より重い330グラムだが、外国製の5本指型よりも200グラム程度は軽い。連携する中国の大学が製造。現在の外国製の価格は最も高くて300万円近くになるというが、185万円にまで抑えた。公費負担が認められれば、利用者は最大約3万7千円の自己出費で済む。横井教授の研究室が基盤のスタートアップ企業「Mu―BORG」(ミューボーグ)で販売する。

 山野井氏は「それぞれの指が握ったりつかんだりする物になじみ、より安定するようになった。今後も実用性を高めるように開発を続ける」と話す。医師などへの周知にも力を入れたいとしている。問い合わせは横井教授の研究室(042・443・5403)へ。岩堀滋

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